10月13日公開の映画「月」を鑑賞した。

この映画は2016年に起きた相模原障害者施設殺傷事件をモチーフにした作品でかつて作家として作品を書いていた女性が障害者施設で働く事になり、そこで事件を起こす人物と接し事件が起きるまでの心境とその現実が描かれていく。

人は正常に生まれてくるわけではない現実を向き合いながらこの事件をどう捉えるか考えさせられる作品となっている。


2016年に起きた障害者施設殺傷事件については当時大きな衝撃を与えた訳だけれど、今年は3月公開のロストケアでも描かれたけれど介護の現実はこの作品では障がい者介護の現実を映しだした上でこの事件に至るまでを描かれていく訳だけれど、介護も障害者も1人ではできない事を誰かがやらなければならないという現実をどう向き合うのか?という事が欠けてしまうと事件の本質が見えなくなってしまうものだ。その本質とどうしてこのような事件が起きてしまったのかを考えながらレビューしていきたい。

キャスト&ストーリー



結末は劇場で観てほしいけれど、今回のレビューとして重度の障害者施設で働く事になった元作家堂島洋子は作品を書けなくなってここで働く事にした。

そこでは様々な重度の障害を抱える人が入所しており、その介護をする事がどれだけ過酷なのかも描かれていく。色々な障害を抱えている人が登場する訳だけれど、多くは家族の人が面倒を見切れなくなり預ける事になった人だという事だ。

実際に障害の頻度は人によって異なる訳だけれどここに入所している人は通常の介護では難しい人たちだという事だ。そしてここの施設の場所もまた人があまり触れる事のない森の奥という事も目のつくところでは難しいという事から人から遠ざけられているという事でもある。

そうなると当然通常の介護では難しくなる訳で時には感情を抑え切れない人を抑えなければならなかったり、通常の部屋ではなく部屋を閉じ込めるようにしている人もいる。

実際にどこへ行くかわからない人を介護するのはそれだけ大変な事だという事だ。

そしてそれを介護する人は時間を減らば減るほど自身の精神的な部分で疲弊していく事になる。

ここで登場したさとくんがこのあと実際に事件を起こす殺人を起こしていく訳だけれど、人はどこかで踏み止まらなければならないがそれを超えてしまうとここに入所している人の存在意義を考える事が必要となってしまう。

高齢になる介護は高齢になって体の自由が利かなくなったり痴呆症が進んだりして記憶を失くしていったりするケースだけれど、ここに入所する重度の障害者はそれ以上に大変な人たちであり身内でも難しいのに他人が介護する事はもっと大変だという事を理解しなければならない。

だからといってもちろん殺していいとはならない訳ですけれど、この作品は人としての存在意義とその人たちを介護する人たちをどう考えるかを現実を見る事で考えてほしいというのがこの作品の意義になっている。

重度の障害者をどうやって介護していくのか?という点を考えた時にこの国として最大の問題となっているのが介護者への報酬の低さにある。元々介護する事は家族がやるものという考え方が前提になっている事からどうしても他人への報酬を低く抑えられているのだけれど、労働力を考えた時には想像以上の重労働な訳でこの収入面の改善をしなければならないところだがそうなると次に問題となるのはその運営資金になる。

原理原則上運営するには運営資金が必要な訳でその運営資金をどう工面していくべきなのか?という議論が最も必要でありこの国ではそういう議論が大きく取り上げられない所も政治的問題なのだと思う。

何事にも運営資金がなければどうする事もできない訳でお金の範囲内でしかできる事ができない以上どうしても報酬面を低くしなければ成り立たないケースも多く存在する。収入が多ければ当然報酬は多くなる訳だが、どうやって収入を増やしていくべきなのか?という部分を欠いたままこの問題と向き合うのは難しいと私は感じる。

必要不要の議論をしてしまう前にやれる事は何か?という議論がなければ最終的にこの事件同様人としての必要性に至ってしまう訳で、どうしてら運営できるのか?人として存在する事ができるのかを真剣に向き合っていく必要性がある。

その仕事に対して生活できる以上の労働力に対する報酬の見直しをしない限り必要不要論に至ってしまう訳で人として不要な存在がいないという結論に至るならこの問題にどう向き合うべきなのかを考えなければ再び同じような悲劇を招いてしまうのではないかと感じざる得ない。

総評としてさとくんがやった事は人として許される事ではないが、その前に介護する人がどれだけ大変な仕事をしていたのかを知って理解した上でその背景を観ていなかければ許されないだけで終わらせてはいけない事件なのだと思います。

誰かが人がやらない仕事をやる事になるのがこの世界である以上は何事も事件の背景と現実を向き合わなければならないと痛感させられる索引だったと思います。





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