5月13日公開の映画「流浪の月」を観賞した。

この映画は大学生が小学生の少女を誘拐した加害者と被害者が時を経て再び再会して当時の心境を振り返りながらも周りには理解されない事に苦悩していく姿を描いたストーリーである。

出会った年齢の違いから2人は苦悩しそして生きていく姿を見てどう感じるだろうか?




世間から見る誘拐事件って確実に誰かがさらった事が前提になるんだけれど、この事件については元々お互いが同意した上で一緒にいた事から誘拐事件とされてしまう。

最もそれ以上に家庭の事情という事も甘味してみるとこの事件というのは2人とも被害者になるのだけれど、世間はそれを理解する事はない。少なくても事情を呑み込めなければだ。果たして2人はどうして2人で暮らした時間があり、そして時を経て出会って再び時が動き出した先にみる結末に何を思うのだろうか?

キャスト&ストーリー



結末は劇場で観てほしいけれど、今回のレビューとして2人が出会ったのは更紗が小学3,4年生、文が大学生の時だった。更紗は家では性的虐待を受けており帰る家がなかった。

これは更紗にとっては家は地獄であり、外からは知る事の出来ない出来事だからでもある。そしてさらに言えば更紗から言えない事でもあったからこそ家に帰りたくないという状況になっていた。

そんな更紗に通りかかった大学生の文はやさしく自分が住んでいるアパートに更紗を招いた。そこから数日間の共同生活を送るのだが、この生活の中で性的な事は一切なくただ普通に生活していただけだった。その日々は更紗にとっては家にいる時より生き生きした生活を送れていた瞬間でもあった。

しかしそれは長く続かずに2人は警察の手によって切り裂かれ、文は当時まだ未成年だった事もあり少年院送りにされたのだった。

それから10年以上の月日が経ち、更紗も23歳となり、文も30代半ばになっていた。世間では小学生を誘拐した忌まわしき犯人という事でどこまでも追いかける人たちがいるけれど、ここではき間違っていけないのは文は更紗に一切の暴力も性的な事もしていないという事であり、更紗自身は被害者ではあるが文に感謝する存在でもあった。

そんな更紗にも付き合う恋人がおり、亮というそれなりのエリート企業に勤める会社員だった。しかし亮にはDVの癖があり更紗は亮のDVに苦しんでもいたところに文と運命の再会をする事になる。

更紗が偶然寄った店に文が務めていたのだった。文は静かに暮らすだけの生活を送っており世間から遠ざかるような生活を送っていた。更紗は当時の自分と一緒にいた事を後悔していただけに文との再会は運命的な部分もある。

しかし先入観というものの恐ろしさをそこから痛感させられる訳だけれど、まず確かに文が逮捕当時は更紗は未成年だった故に現行の法制度では文は未成年者を連れ去ったという事で犯罪者となってしまう。

しかし10年以上経て更紗も20歳を超えているので実際に更紗と文が会っていたとしても双方合意の上で会っている以上法的に触れる事はない。

中学聖日記でもそうだったんだけれど、年下の彼が成人を経て社会人となった上では両親も本人の意思を否定する事はできない訳でほんの1歳違うとかでこれだけ状況が変わるというのは色々と考えなければならないのですが、文には更紗には言えなかった秘密も抱えていたがストーリーの終盤にその秘密をカミングアウトする事になる。果たして更紗と文の辿り着く先とは?

結末は劇場で観てほしいけれど、事件の経緯を本当に知るのは更紗と文しか知らないという事でもあった。警察もこれは良くない事なのだが先入観が先に走って文を悪者にしている。文が何も悪い事をしていないという事でも1度逮捕をした事がある人物は警察はそう見ないという事は世間もそう見ないという事でもある訳だが、警察は検挙する組織であり更紗を守る組織ではないという事をまず忘れてはならない。

更紗が本当に苦しんでいた事を知っていたなら本当に逮捕されるべきは別にいた訳だけれど、それ以上に警察の不手際というのは大学生時代に文を逮捕した事ではなく、大人になってから会っていた更紗と文に対しての警察の捜査にあるという事だ。

更紗と文は更紗の同僚だった女性の子供を預かっていただけなのに過去に誘拐事件の履歴のある文が関わっていたから事件と判断して誤認逮捕している。

それだけ世間や警察は先入観でしか物事を観ていないという事になるけれど、更紗と文にとっては再び出会った事でそれぞれが救われる存在になっていたという事であるし、年齢が違っていたなら2人はここまで苦しむ事もなかったのだと感じる。

ただ更紗と文に共通する事は性的虐待や性的不全という誰にも言えない苦しみを1人で抱えていたという事だ。1人で抱えていた2人だからこそわかり合えた部分もあるし、文が小学生だった更紗に何もせず見守っていただけの理由もラストで描かれる訳だが、2人は世間からの目に晒されながらもこれからも生きていなければならないという現実だけが残った。

総評として更紗と文はそれぞれ言えない事を抱えて生きてきた。言えたならどんなに解放されただろうか?それでも2人がわかっているならそれでよいと思うし、もう大人になった2人が一緒になる事を否定する理由もない。2人には必ず生きて行ける場所があると思うので2人で強く生き続けてほしい。





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