11月20日公開の映画「ばるぼら」(R15+指定)を観賞した。

この作品は手塚治虫原作のばるぼらを手塚治虫の息子である手塚眞監督により実写化された作品で、小説家として名のある男がある日アルコール依存症の女と出会った事である魔術の世界に入り込んで堕ちていく姿が描かれていくストーリーである。

どんなに名声を得ても時として1つの出会いで堕ちていく姿は誰もが陥る可能性ある事だと認識しなければならないのかもしれない。

手塚治虫氏が1970年代に発表した大人向けの漫画という事で確かに作品を観賞して観てこの作品が若い世代だとなかなか理解し難い世界観なのだとは感じる。

ここで登場する小説家の男はかなりの名声を受けていたが、一方で異常な性欲に悩まされる日々を送っている人物だ。そんなある日に通りかかったところにアルコール依存症の女と出会ってからさらに彼の人生は堕ちていく訳だが、この男はどうしてそこまで落ちるしかなかったのか?

キャスト&ストーリー



結末は劇場で観てほしいけれど、今回のレビューとして小説家の美倉洋介は小説家としての名声を得ておりそれだけの人気もあったが、一方で人知れず異常な性欲に悩まされる日々を送っていた。

そんなある日アルコールに溺れる謎の女ばるぼらと出会った事で生活が一変していく。

普通ならこんな出会いはないと思うところだが、この出会いが美倉を破滅へと堕ちていくキッカケになるのだが、それだけ普段から美倉が性欲に悩まされていた事が描かれていく。

小説家として成功している美倉にとってそれを維持する事は想像以上に難しい事だ。特に人生最高と言われる作品を発表してしまうとその後にそれを超えるだけの作品を発表する事は非常に難しい。

しかし周りはそれを期待して最高の作品に再び出会いたいと期待されるプレッシャーが美倉に大きなストレスとなって異常な性欲に繋がっていったと感じる。ストレスのはけ口と言ってしまうと聞こえが悪いが、人はストレスをためない為に何かでストレスを解消しなければ壊れてしまう。

その中で美倉は女性に性欲を求めた。そして出会ってしまったのがばるぼらだった。このばるぼらはアルコール依存症の女性として登場するが美倉はその前にこの女性が本当に存在するのか存在しないのかすら曖昧な状況で進んでいくが、美倉はばるぼらと出会ってから様々な幻想を見てしまう。

1つはマネキンなのに洋服店の店員に見えたり、もう1つは犬なのにある家のお嬢様に見えたりとそのたびにばるぼらに救われる。そこから美倉はばるぼらなしでは生きられなくなってしまう。

しかし美倉にはこれまでの活動を支えるマネージャー甲斐加奈子がおり、常に献身的に美倉の活動を支えていた。しかしばるぼらと出会ってからは加奈子の存在は次第に薄れていく訳だけれど、それでも加奈子は美倉がある事件に巻き込まれる事になっても見捨てる事はなく支え続ける。

そんな美倉はばるばらと一緒になりたいと結婚式を行おうとするがここで美倉はばるぼらがどんな関係と繋がっているのかを知るもそれでももう引き返す事ができないところまできていた。そして2人の運命はこの日の堺に堕ちていく事になる。

堕ちてしまった2人はしばらくの間離れ離れになるものの、美倉はばるぼらを探し続ける訳ですが果たして2人の堕ちていく先に何が待っているのだろうか?

結末は劇場で観てほしいけれど、人は時としてある出会いから堕ちていく事があるというのを描いたストーリーでありそのキッカケがばるぼらとの出会いであり、そしてばるぼらが関係していたある儀式である。

一瞬で全てを失う事があるというのは世の中に少なくないのだが、美倉の場合は小説で成功した事によりそれ以上の期待を知らず知らずにプレッシャーとしてストレスを抱えた事によりそのプレッシャーに耐えられなくなり、次第に性欲に求めてそれが異常な状況までに至っていたがそれにきづかせてくれたのがばるぼらだったという事だ。

ばるぼらの存在をどう捉えるかだけれど、実在する相手でもあるし、幻想と捉える事もできるがここでは実在する相手として捉えてその存在が自ら自覚する事ができなかった幻想に気づかせてくれた存在であり、ばるぼらも美倉と結ばれる事でさらに美倉の依存している事を自覚させた。

ばるぼらの存在はそれだけ幻覚である事に気づかせてくれる存在が目の前に現れたからこそ気づいた時には既に堕ちていたという事だ。

総評として誰もが全てを失い堕ちてしまう事は有り得る。その有り得る中でどこで幻想を気づく事ができるのか?という事をこの作品を通じて教えてくれたのだと思うし、そこから人はどう踏み止まる事ができるのか?という事を手塚治虫は残して行ったのだと感じる。





ばるぼら 手塚治虫文庫全集
手塚治虫
講談社
2015-08-28



映画「ばるぼら」公式読本
キネマ旬報社
2020-11-20






ばるぼら 1
手塚治虫
手塚プロダクション
2014-04-25



ばるぼら 2
手塚治虫
手塚プロダクション
2014-04-25




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