11月8日公開の映画「ひとよ」(PG12指定)を観賞した。

この映画は15年前に起きた母親が父親を殺した事件に翻弄されるその子供たちと15年ぶりに戻ってきた母親との絆を取り戻すまでのストーリーである。

世間から観たらわからない事情もあり、そういう世間体を乗り越えて再び家族となっていく事の難しさを知る。




家族間による殺人事件は世間でも珍しい事ではないけれど、その殺人事件に至るまでの事情というのはやはりその家族の中でしか知らない事は少なくない。昨今の父親が暴力を振るう息子が他人に危害を加える可能性を危惧して殺してしまった事件もまた事情を考慮すれば情状酌量の余地を感じる事もあるが、残念ながら世間一般はそういう目で見てくれないという現実がある。

このストーリーでは暴力を振るい続けていた父親から子供たちを守るために母親が父親を殺してしまった事から人生を翻弄される家族が描かれる。15年ぶりに戻ってきた母親と息子が再び家族としての絆を取り戻すまでどれだけの葛藤があったのだろうか?

キャスト&ストーリー




結末は劇場で観てほしいけれど、今回のレビューとして15年前にタクシーを営んでいた会社で母親稲村こはるが父親稲村雄一をタクシーで引いて殺してしまった事件が発生した。世間的にいえば家族間の殺人事件になるのだが、家族の中では父親の暴力に耐えかねていた子供たち稲村大樹、稲村雄二、稲村園子を守るために母親が父親を殺したという見方になる。

これは難しいもので暴力を振るう父親に対してどう守るのか?というのはどの家庭でも起こり得る話だ。そういう場合は大抵離婚協議になるのだが、それが長期化すると近年では無戸籍の子供も生まれてしまうケースなどもあり実はかなり難しい。色々な法についてを理解しないとこの問題は簡単には解決できず、行き詰ってしまうとこのような妻が夫を殺してしまう事件に発展するという事だ。

問題はその後であり父親を殺した事により子供たちは確かに父親の暴力から解放される事ができたが、その後父親殺しの子供たちという世間体に苦しめられる事になる。世間の人って詳しい事情まで見る人っていないからね。

そこから15年間壮絶な人生を子供たちも歩んでいくという事になる。まず影響したのが普通に生活できないという事だ。常に事件の影が影響し、行きたい大学、就職先への就職は絶望的となり、その事により将来を閉ざされる事にもなっていく。そんな中で結婚までした長男大樹は夫婦関係で苦しむ事になり、雄二はその事を恨み、唯一理解があった妹の園子は帰ってきた母親と向き合っていた。

やはり全ては知ってしまったら見方が変わってしまうという事にある。普通にこういう事があったと知ったらそう簡単には向き合えるものではないけれど、もっと事情を知っていけば向き合えなかった部分も向き合えるようになる可能性がない訳ではない。最近起きた元事務次官が息子を殺した事件も事情を顧みれば情状酌量の余地を感じさせる内容だったりする。もちろん殺す事を良しとはしないがその人たちにとっては誰も助けてくれない状況では選択肢がない事を考慮しないといけない。

色々なバッシングの果てに辿り着く結論はいかに?

結末は劇場で観てほしいけれど、色々な家族事情を移した作品であり、そういう作品だからこそ1つ1つの事情を観ていかなければならないのだと感じている。事情も知らずに批判すると真実が見えなくなるというのは今年色々な事で感じたし、本当の真実に辿り着くにはそれだけの事情を想像できる事も必要だという事だ。

総評として子供たちは色々な葛藤と世間のバッシングに耐えて絆を取り戻すまでに至った。家族にはそれぞれ様々な事情がある。その事情を考慮していかなければどんな事件でも様々な事情があるという事で事件が起きる。誰かを守るために起きてしまった事件に対して本当にその事件を防ぐにはどうしたら良かったのか?を考えた時に最善の答えは見つかるだろうか?起きてしまった後に本当に考えるべきはこの事件はどうして起きてしまったのかを考えられる事こそがこの映画の本当の意味での存在なのだと思います。




ひとよ (集英社文庫)
長尾 徳子
集英社
2019-09-20