8月24日公開の映画「検察側の罪人」を観賞した。

この映画は検察が起訴しようとした犯人の過去に時効となった事件の犯人と知りながら真実より犯人を裁くために奔走する検事の姿が描かれていくストーリーである。
法制度の下では裁ける事件、裁けない事件が存在するが、その葛藤と向き合う事でこの事件をどう向き合っていくのかを考えさせられる事となる。

冤罪事件でありながら冤罪事件じゃない作品と言ってしまえば解りやすいんだけれど、法制度の下では過去の事件ではなく今の事件についてどう裁くべきなのか?という事が重要点になる。

仮に過去の事件を起こしていたとしてもそれは事件としては別の事件であり、その事件と今回の事件を一緒にする事は法制度上許されない。

もし起訴をするなら別の事件として起訴しなければならないが、かつて日本には時効制度が存在した。正確には公訴時効というけれど2010年4月27日に人を死亡させた罪であって死刑に当たる罪については公訴時効なしという事になり、それ以前が15年もしくは25年だった事を踏まえるとこの事件を見ていく上で重要なポイントになっていく。

相手がかつても殺人犯だった事を知りながら別の事件と向き合わなければならないという現実に果たしてどんな結論が必要なのだろうか?レビューしていきたい。

キャスト

最上毅演じる木村拓哉

沖野啓一郎演じる二宮和也

橘沙穂演じる吉高由里子

丹野和樹演じる平岳大

弓岡嗣郎演じる大倉孝二

小田島誠司演じる八嶋智人

千鳥演じる音尾琢真

前川直之演じる大場泰正

青戸公成演じる谷田歩

松倉重生演じる酒向芳

高島進演じる矢島健一

桜子演じるキムラ緑子

運び屋の女演じる芦名星

最上奈々子演じる山崎紘菜

諏訪部利成演じる松重豊

白川雄馬演じる山崎努

他多数のキャストでストーリーが進行する。

ストーリー

都内で起きた殺人事件を担当することになった東京地検刑事部のエリート検事・最上と、彼に憬れる駆け出しの検事・沖野。最上は、すでに時効を迎えた未解決殺人事件の最重要容疑者だった松倉という男に狙いを定める。

最上に認められようと、沖野は自白を引き出そうと取り調べるが、頑なに松倉は犯行を否認し続ける。やがて沖野の中に、「最上は松倉を犯人に仕立て上げようとしているのでは」との疑問がわく。ふたりの検事は、互いの正義を賭けて対立する。

結末は劇場で観てほしいけれど、今回のレビューとして沖野啓一郎検事は研修を終えて4年後に東京地検刑事部に配属されてきた。そこには4年前に指導された最上毅検事がおり、沖野は最上の下で事件と向き合っていく。

そこで沖野が向き合う事になる事件は工場夫婦殺人事件になるのだが、その事件にはかつて未解決殺人事件の最重要容疑者だった松倉という人物が含まれていた。当然かつて最重要容疑者松倉が含まれているという事で警察、検察も注目する事になる訳だけれど、ここで重要な事が1点ある。

事件というものはこの事件について問うものであり、他の事件を問うものではないという事だ。刑事事件と言うのは難しいもので、関連性のない事件については連動しない。2つの事件に接点があれば関連性という点で2つの事件を1つに纏められるが、時効となった事件と今回の事件は関連性がないという扱いになる。

冒頭に触れた公訴時効というのは2010年4月27日に人を死亡させた罪であって死刑に当たる罪については公訴時効なしと法改正されているが、その時点で15年という2010年4月26日までに時効が成立した事件については時効は成立している。

ここで触れる松倉の事件は2010年4月26日時点で時効が成立した事件で公訴時効を迎えており、仮に自供しても罪を問えない。故に今回の事件で松倉が事件に関わっていなければこの事件については無罪という事になる。

この点がこの事件のポイントになっていく訳だけれど、それ以上にどうして最上が松倉を何としても起訴しようとしているのか?という点が実際に気になっている訳だけれど、最上は中学時代にある女性が殺されている。その頃した相手こそ松倉という訳だ。

事件そのものが時効を迎えているだけに現状として松倉の起訴はできない。できないからこそ検事として苦悩してしまう訳だけれど、そこに沖野はこの工場夫婦殺人事件に松倉が絡んでいない事を感じ始めていく訳だが、ここからがこの事件の最大のキーポイントになっていく。

これ以上触れていくと最大の核心に触れてしまうので結末は劇場で観てほしいけれど、事件の経緯、事件の経緯、過去の事件という部分において刑法では区切らなければならないというのは被害者側からすれば確かにやり切れない気持ちは十分理解する。

どうやっても松倉を裁きたいという部分は最上にはあった訳だけれど、昨年公開された22年目の告白で犯人を追いかける被害者と刑事が描かれていたけれど、わずか1日差で起訴できるかできないかが決まった事件だったが松倉はどうあがいても起訴できない訳で、何かの事件に絡ませて起訴したいという気持ちは十分理解するんですよね。

これは立場次第なのだという事がこの作品として描かれていく訳ですが、沖野はこの松倉の事件については被害者でも関わりもない訳で、ある意味で客観的に事件を見る事ができる立場にあった。冤罪事件を追っていた橘沙穂もまた沖野と同じ立場だ。

しかし最上は違った。被害者の立場であり、完全なる事件の関係者だった訳であり、その事件があったから検事を目指したというなら最上は松倉を起訴する為に検事になった事になる。そのための手段を択ばないという事になっていく訳だが、確かにこの世の中難しい問題であり、昨年の22年目の告白もまた加害者が真実を告白するという題材だったが、実際に加害者による告白は既に少年Aであった酒鬼薔薇聖斗の件があり、世の中に波紋が広がったのは記憶に新しい。

目の前に犯人がいながら起訴もできず、逮捕もできないという現実を人はどう捉えるのか?を考えさせられる作品である事は言うまでもない。最上の気持ちは十人分に解るものの、今の刑法が変わらない限りは最上のような人が報われないのだという事だけが残った。

総評として最上と沖野の立場では全然考え方も見方も違ってくる。その先にある事件の真相を追った沖野と橘もまたやり切れない思いを受けるのだが、この事件に対して冷静に向き合う事がいかに難しいものなのか?というのを痛感させられるし、何をもって報われるのか?という事を色々考えさせられる事になると思います。





検察側の罪人 上 (文春文庫)
雫井 脩介
文藝春秋
2017-02-10



検察側の罪人 下 (文春文庫)
雫井 脩介
文藝春秋
2017-02-10









検察側の罪人
富貴晴美
Rambling RECORDS
2018-08-08

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