9月23日公開の映画「ユリゴコロ」(PG12指定)を観賞した。

この映画は殺人犯の女性が最初の殺人から今に至るまでの経緯を綴ったノートを読んだ男がこの女性の正体を知ろうとして行く姿を描いた作品である。

殺人そのものは許されるものでないがどうしてこういう殺人犯になっていったのか?を克明に絵がされた作品としては興味深く観る事になるだろう。

殺人犯が主人公という作品は色々あるけれど、どうしてこの女性が殺人犯となっていったのか?という部分を考えながら見ていく作品だと思う。


もちろん殺人そのものは許されるべきものでないのでそれはそれで死刑!以上では何も作品にならないのでこの女性はどうしてそうなったのか?を考える作品だ。その1冊のノートに記載された内容を読んだ男はその事実を知った先にみる真実とは?


キャスト

美紗子演じる吉高由里子

亮介演じる松坂桃李

洋介演じる松山ケンイチ

みつ子演じる佐津川愛美

千絵演じる清野菜名

美紗子(中学生)演じる清原果耶

細谷演じる木村多江

他多数のキャストでストーリーが進行する。

ストーリー

ある家族、余命わずかな父の書斎で見つかった一冊の日記。そこに綴られていたのは、ある殺人者の手記。これは事実か、創作か。いったい誰が、何の為に書いたのか。そして、物語は一転。壮絶な愛の物語へ辿り着く。


結末は劇場で観てほしいけれど、今回のレビューとして美紗子が残したノートを手にした亮介はそのノートにユリゴコロとタイトルが付けられていた。このノートは父の書斎から見つけたものだったが、その内容を読むにつれてその内容が事実として起きた出来事だと知っていく事になる。


美紗子が小学生の時からコミュニケーションを取る事が苦手な少女だった。その苦手な故に友達はおらず時々呼ばれるある家に数合わせで参加していたある日に無死を数多く井戸に投げ込む事で美紗子に眠っていた悪魔に目覚めてしまったのだった。


子供の頃に虫を殺してしまったりするケースは時として何かを殺してしまう事に目覚めてしまうという事が時としてある。これまで色々な凶悪犯の幼少期にもそういう傾向があったという鑑定結果もあったりするものだが、それが虫までで終わればそういう殺人まで至らないのだが、美紗子の場合はここで殺人を犯した事でその歯止めが利かなくなっていく。この事件を事故で片付けた事は当時の美紗子が小さかった事が大きな要因だろう。


成長した美紗子は高校生になっていた。その頃の美紗子は無口であり殆ど話さない女性になっていたが、ここでも殺人鬼の本能が働いてボールを拾おうとした少年を鉄板を落として殺すというこれも事故扱いにする警察の経緯もどうかと思うけれど、この時巻き込まれた青年は後に再会する事になる。


美紗子は2度までも犯行しても警察の魔の手を逃れた事で高校卒業後美紗子は調理師専門学校で調理師を目指す。そこで出会ったみつ子という同期生はリストカットするほど自分を気づ付ける女性だった。


リストカットしないと生きている気にならないというみつ子に美紗子は興味を持ち始め、そこでみつ子が死にたいという言葉を受けて自らも切って見せてリストカットを止めさせようとしたが、結局みつ子は止める事ができなかった。そして美紗子はみつ子も殺してしまう。


この時点で3人も殺している訳だけれど、みつ子の件もまた警察からの魔の手を逃れて美紗子はある食堂に勤める事になる。ここで当初はそのまま勤め続けるもわずか1年で辞めてしまうのだった。その後美紗子は娼婦となり体を売ってお金を稼ぐようになるのだが、そこで出会った男洋介は美紗子に優しく接するのだった。これまで色々な男と接してきた美紗子だったが洋介のような男は初めてだった。


その直後以前の店の料理長を美紗子は手を掛けてしまった直後に美紗子は洋介と共にいた時に妊娠が発覚して洋介の子でないにもかかわらず一緒に育てようと告げた事で美紗子の運命は変わるのだった。


この時点で4人も殺している訳であるけれど普通の精神状況でないのはハッキリするが美紗子にとって誰かを殺す事が拠り所になっていた事は美紗子にとってある種の不幸ではある。そして次々手を掛けていたところに今度は警察の魔の手が忍び寄ってくる訳だけれど美紗子はついに逃げられないと悟り始めるのだった。


果たして美紗子はその直後どういう行動を取ってどういう結論を出したのだろうか?


結末は劇場で観てほしいけれど、美紗子はいわゆるサイコパスであるのは間違いないところだが、人は時として殺す事を何とも思わない感情を持つ人間もいる訳で、通常なら自ら躊躇いや抑制が発生するところだが、美紗子は幼少期の時からその感情がなかった。


故に1度誰かが亡くなってからは次から次へと殺人を重ねていく。最終的には10人以上超える犠牲者が出る訳だけれど、そんな中でも美紗子を愛し、受け止めてくれた人がいた。それが洋介であり、洋介も美紗子の犠牲者ではあったが、その犠牲があったからこそ逆に洋介は美紗子を受け入れられたのだろうと思う。


もしあの時美紗子と出会わなければ洋介は美紗子と関わる事のない人生を送ったかもしれない。そんな美紗子も自ら命を宿した子供を産む事でこれまでと違った感情が芽生えた。この感情が美紗子の人生を大きく変化させる事になり、ユリゴコロと題したノートに記載する事でこれまでの経緯を残した。


美紗子も自ら産んだ子供の命があったからこそそれまでの人生を後悔する事に繋がったし、最終的には美紗子は自分の子供を救うために罪滅ぼしをしたのだった。


総評として美紗子のような存在は本当は許される事のない存在であるし、本当は存在してはならない存在なのだと思う。それでも最初から殺人犯として生まれた訳じゃなく殺人を犯すまでも殺人者じゃなかった事を踏まえると美紗子の身近に命の大切さを教える存在がいなかった事そのものがある種の不幸だったとは言える。


しかしその過ちは自ら産んだ子供と向き合う事で子供には同じ道を歩ませないという母親としての使命を果たそうとした姿は育つ環境が美紗子を育て、美紗子の子供が育った環境では美紗子のようにならなかった事からも育つ環境で人は同じ道を歩まないという事を美紗子自身が示したのかもしれない。





ユリゴコロ (双葉文庫)
沼田まほかる
双葉社
2014-06-18










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