人はショックを受けた時に何かを失う事がある。ここに登場する女子高生は小さい時におしゃべりのせいで両親は離婚し、その原因が自分にあると言われた事で声が出せなくなった。精神的なショックの場合幼少期に受けてしまうと克服までにかなりの時間を要する場合がある。大人になったとしても簡単に克服できる事ではないが、高校生となった女性が合唱を通じて声を取り戻す事ができるのだろうか？

キャスト

坂上拓実演じる中島健人

成瀬順演じる芳根京子

仁藤菜月演じる石井杏奈

田崎大樹演じる寛一郎

城嶋一基演じる荒川良々

成瀬泉演じる大塚寧々

他多数のキャストでストーリーが進行する。

ストーリー

コミュニケーションが苦手で本音を言えない、やる気のない少年・坂上拓実は高校3年生のある日、担任から「地域ふれあい交流会」の実行委員に突然任命され戸惑う。一緒に任命されたのは、全く接点のないクラスメイトの成瀬順。幼い頃に何気なく発した言葉によって家族がバラバラになってしまったことが原因で、喋ろうとすると腹痛が起きてしまい、コミュニケーションは筆談のみ。クラスメイトからは変わった子だと思われている。担任から出し物としてミュージカルを提案され、ヒロインを演じることになった順は、拓実からのある言葉をきっかけに＜今まで心に閉じ込めてきた想い＞を歌にして伝えると決心するのだが…。

結末は劇場で観てほしいけれど、今回のレビューとして全く話す事のない成瀬順はある日「地域ふれあい交流会」のメンバーに任命された。成瀬は幼い時に何気ない一言が離婚を招いた事が原因で言葉を失ってしまっていた。そんな状況を長年続いてきて高校生になっていた成瀬は殆ど言葉を発する事はこれまでなかった。そんな中で突然命じられた「地域ふれあい交流会」の実行委員は成瀬にとって転機となる。その中にはコミュニケーションが苦手な坂上拓実もいたが、この2人がこの接点をキッカケに接していく。こういう交流会の出しものってなかなか企画を決める事は難しいものだけれど、成瀬の希望でミュージカルをやる事になった。

歌う事なら発せられるという成瀬の気持ちが動かしたものだったが、それは成瀬の勇気でもあった。そんな中で最初はやる気を見せなかったクラスメイトも成瀬が勇気を出して声を発しようとする姿に次第に纏まり出していく。成瀬も歌う事なら声を出せるようになってきた。しかし色々ありながらも本番まで纏まりかけた矢先に成瀬は突然逃げ出してしまう。それを坂上が連れ戻そうとするが果たして成瀬はミュージカルで歌う事ができるのだろうか？

結末は劇場で観てほしいけれど、人は時としてある事がキッカケで声を失ったり、今までできた事ができなくなる。それはそういう経験をした人であればそれを克服するまでかなりの年月が掛かる事は言うまでもない。成瀬も10年近い月日が掛かっているのはそれまでに克服するキッカケを掴めなかった事も大きい。でもこういう普段やる事のない実行委員に命じられた事が成瀬の転機だったのはそれは何かをキッカケにすれば克服できるという事を示すものだった。

総評として成瀬は歌う事を通じて乗り越えようとした。でもこれは1つのキッカケでありキッカケを本当に克服まで行くにはそれ以上のプロセスが必要だったりする。それが成瀬にとってミュージカルで歌う事にあったという事だ。1つの勇気がトラウマを克服するというストーリーの最後は清々しかった。