4月11日公開の映画「ソロモンの偽証 後篇・裁判」を鑑賞した。

この映画は宮部みゆき原作のソロモンの偽証を映画化した作品で

後篇では裁判の概要が描かれ、

中学生たちによる裁判で真実が明らかになっていくストーリーである。

真実を知った時私たち傍聴者は何を感じ、何を思い、そして何が正しい裁きなのだろうか?

と考える事になるだろうし、

真実を知ろうとする事がどれだけ覚悟が必要な事なのかを感じる事になるだろう。
前篇事件を観た上で後篇裁判を観て行く事になる訳だけれど、

今は裁判員制度が行われるようになって私たち一般市民が

裁判員になって事件と向き合う時代になったが、

この時代はそういう一般市民が裁判に参加する事ができない時代の話であり、

更には中学生たちが裁判を行うという異例な状況下だった事を踏まえると

この裁判が行われた事そのものがある意味異例中の異例と言える。

ここで警察が一度結論を出した捜査を再度裁判によって

真実を明らかにしようとする訳だから警察の捜査が覆る可能性すらある訳です。

その中で中学生たちは真実を知ろうとした。

その真実がどんなに残酷なものでも・・・

果たして藤野涼子たちが求めた真実を知った時

私たちはどんな思いを抱く事になるだろうか?レビューしたい。

キャスト

藤野涼子演じる藤野涼子

神原和彦演じる板垣瑞生

三宅樹理演じる石井杏奈

大出俊次演じる清水尋也

浅井松子演じる富田望生

野田健一演じる前田航基

柏木卓也演じる望月歩

倉田まり子演じる西畑澪花

向坂行夫演じる若林時英

井上康夫演じる西村成忠

橋田祐太郎演じる加藤幹夫

井口充演じる石川新太

藤野剛演じる佐々木蔵之介

藤野邦子演じる夏川結衣

三宅未来演じる永作博美

森内恵美子演じる黒木華

佐々木礼子演じる田畑智子

茂木悦男演じる田中壮太郎

垣内美奈絵演じる市川美和子

高木演じる安藤玉恵

楠山演じる木下ほうか

上野素子演じる余貴美子

北尾演じる松重豊

今野努演じる大河内浩

津崎正男演じる小日向文世

中原涼子演じる尾野真千子

他多数のキャストでストーリーは進行する。

ストーリー

舎を覆う悪意の雲を拭い去り、隠された真実を暴くため、

学校内裁判を開廷しようと立ち上がった一人の女子生徒。

教師による圧力に屈せず走り出す数名の有志たち。

そして他校から名乗りを上げた弁護人の降臨。

その手さばきに一同は戦慄する。

そして裁判が始まり……。

結末は劇場で観てほしいけれど、

今回のレビューとして裁判が始まる直前に被告人となった

大出俊次を出廷させる事がこの裁判が行われる大前提だった。

あれだけ普段から補導され、暴力を振るい、

さらには多数の余罪と言うべき被害数を考慮すればただですら有罪!

と見なしたくなるのは無理もない話だ。

これだけ素行が悪ければやったと思われても仕方ない状況ではある。

そんな中で告発文の存在がある訳だから

この告発文の真実にどう辿り着くかが問題ではあった。

ただこの裁判で間違ってほしくないのは

この裁判は亡くなった被害者柏木卓也を大出俊次被告が実際に殺したのか?

を争っている訳であり、それ以外の余罪については別件になるという事だ。

どんなに素行が悪かろうとも被害者柏木卓也を殺していなければ

この裁判では無罪になるという事だ。

他の余罪は他であり、裁判ではあくまで被害者柏木卓也が殺されたか否かだけが焦点だ。

裁判は何が焦点なのかを見逃してしまうとこの裁判の本来の目的を

見失ってしまうのでそこの真実に行きつくまでは

被害者柏木卓也を大出俊次被告が殺したのか?

という事だけはブレてはならない。

そんな中何とか神原和彦弁護人の説得で出廷を了承した大出俊次被告は

数々の証人尋問の出廷者が証言して行く。

事件を担当した佐々木礼子刑事が事件の状況を証言して行く中で、

学校の屋上は南京錠で鍵が掛かっていたが、

鍵を持ち出された形跡はなかったと話しており、

どうやって屋上に入ったのかを調べていなかった事が発覚するという幕開けから始まる。

確かに屋上に入るために南京錠をどうやって開けたのか?

が証明されなければ警察としては大きな失態の1つになるだろうね。

ただ現実問題被害者柏木卓也は屋上から落ちて亡くなっているという事実は変わらない。

次に当時校長だった証人津崎正男は当時の事件を校長として

判断は適切じゃなかったと謝罪し、

結果的にその後交通事故で亡くなった浅井松子も犠牲にしてしまった事を

校長としての判断ミスだったと証言している。

校長だった津崎正男は生徒たちを守るために

この事件を自殺で片づけようとした事の判断についてだけれど、

生徒たちにこの事件に関わらせたくないという気持ちは十分解るし、

知らない方が良いケースもあると判断した上での決断だった。

3人目は当時の担任だった森内恵美子が証人として立つも

その直前に森内恵美子は隣人に襲われ殺人未遂事件の被害者となっていた。

そんな中藤野涼子検事は森内恵美子の元に告発文が届いておらず、

その告発文は隣人の森内恵美子を襲った犯人が

テレビ局に送ったものだった事が明らかにされる。

当時森内恵美子は内部から告発文を送った事を疑われていたが、

これにより森内恵美子は告発文は受け取っていなかった事が確定した。

これについては学校内部で人を信じない部分が強過ぎた結果だろうし、

何より校長だった津崎正男が隠ぺいした事による影響が大きい。

その直後まさかの展開にはさすがにやり過ぎでは・・・と思いましたけれどね。

4人目は藤野涼子検事が何度も説得した三宅樹理の出廷だった。

藤野涼子はここで当日話すと語った三宅樹理は言葉少なに当時の事を語り出した。

口数は少なかったものの、告発文を送ったのはその後亡くなった

浅井松子が送った事を証言し、自らは学校へは行っていないし、目撃もしていないと語った。

それ以上は語らなかったが、

ここでハッキリと告発文を送ったのが浅井松子である事がハッキリしたのだった。

この時点で告発文の送り主が浅井松子である事がわかった事で

どうして浅井松子は告発文を藤野涼子に送ったのか?

という部分がその後の焦点になっていく。

ここで浅井松子がどうして告発文で大出俊次被告がやったのか?

という趣旨を書き送ったのか?という点がわからなければ先へ進まない。

そして大出俊次被告の証人尋問となった訳だけれど、

これまで数多くの被害者が傍聴している事と、

素行の悪さで補導歴多数、暴行件数多数となればさすがに累積有罪でも当然ではある。

ただ忘れてはならないこの裁判は被害者柏木卓也を大出俊次被告が殺したか?

が焦点でありそれ以外の件は別件だという事を忘れてはならないが

それでも感情的になるのは無理はない。

そんな中で神原和彦弁護人は数多くの質問を

大出俊次被告に向けるも態度の悪さだけが目立つ。

そして質問にまともに答えられない状況になった事で

大出俊次被告に対して神原和彦弁護人は”はい”か”いいえ”で答えるようにと

質問を変えるとこれまでの余罪の数々を突然話し出す。

これはもちろん伏線として浅井松子が

どうして大出俊次被告を犯人だという告発文を送ったのか?

という事を明らかにするためだった。

確かにこの裁判は大出俊次被告が被害者柏木卓也を殺したかは焦点であるが、

その原因となったのが告発文である。

この告発文がどういう関係で送られる事になったのかを明らかにしなければ

この裁判の結審には至らない。

その点では浅井松子が大出俊次被告から受けていた

仕打ちを明らかにする事がどうしても必要だった。

それが三宅樹理が大出俊次被告から暴力を受けてそれを止めようとした

浅井松子も被害に遭っていた事が真実として暴かれた。

これだけの暴力を受ければ人の心理は

暴力を振るった奴への復讐を考える訳であるんだけれど、

それが浅井松子によるものだった訳でもあるし、

三宅樹理を大出俊次被告から守ろうとしたという行動だった。

確かにこれで大出俊次被告が犯人と思い込まれる事になれば

自然と三宅樹理を守れる事に繋がる訳であり、その気持ちはわかる。

ただこれが結果的に浅井松子の死へと繋がる事になるのが

皮肉な結果として現れる事になった。

そしてこの後に大出俊次被告が当日会ったという

大出俊次被告の自宅放火は大出俊次被告の父親の自作自演による事が

発覚して当時会ったというブローカーの弁護人が証言に立つという展開になり、

ここで大出俊次被告と会った事を証言して大出俊次被告の無実へと動き出そうとする。

そして最終日に藤野涼子はある証人を出廷させて

最後の証人にこの事件の経緯を証言させるに至る。

果たしてこの裁判で大出俊次被告にどんな判決が下るのか?

そしてこの事件の真実とは何だったのだろうか?

結末は劇場で観てほしいけれど、

最後の部分だけは大きなカギを握るので劇場で観て確認してほしいけれど、

この裁判がどうして行う方向になったのかというのは

神原和彦弁護人が大きなカギを握っていた事になるんだけれど、

この事件の経緯は被害者柏木卓也がどうして亡くなったのか?

という部分も大きい訳で、

その部分は途中で藤野涼子検事に語った言葉だけの偽善者という言葉が

大きなキーワードとなっている。

それが神原和彦弁護人にも同じ言葉を投げかれられていた。

神原和彦弁護人は母親を父親に殴り殺され、

さらにその父親は刑務所で首つりして亡くなっている。

これが被害者柏木卓也が神原和彦弁護人に投げかけた

ある言葉が裁判へと駆り立てる事になった訳なんだけれど、

柏木卓也という人物像をよく理解しないと

この事前の全貌は解明しない訳でもある。

この事件の全ては柏木卓也の死によって始まっている訳であり、

柏木卓也が語った言葉だけの偽善者という言葉の意味が

最後で解明される事になるんだけれど、

柏木卓也はある意味頭の良い子ではあったが、

その分結論を変える事の出来ない融通の利かない子でもあった。

この世の中は答えはいくつも存在する訳であり、

その答えが正しいとは限らないのも現実である。

ただ柏木卓也という人物は答えは1つしかないと考える融通の利かない子だった。

それが時として良い時もあるんだけれど、

それが時として絶望の答えしか辿り着かない場合は

全く逆方向に向かう事となる。

人は1つの事にいくつかの選択肢を持つ事が可能なものである。

しかし柏木卓也は答えは何時も1つしかないが為に

それが神原和彦弁護人を藤野涼子検事を追い込む事になった。

それは柏木卓也の答えが正しいという事で・・・

柏木卓也の語った答えが正しいのか?

と問われた時これは人によって異なる部分があるだろう。

人生観にもよるが彼の言葉は正しいと答える人もいるかもしれない。

ただ私の人生観として語らせて頂くと柏木卓也の答えは

正しくもあり間違いでもあるという事だ。

確かに神原和彦弁護人と藤野涼子検事に対する言葉は

正しい部分もあるが正しくない部分もある。

これは既に明らかになっている藤野涼子検事の事例を解説すれば

わかりやすいが確かに藤野涼子検事は三宅樹理と浅井松子が

大出俊次被告に暴力を受けている場面を目撃して逃げようとした。

普段からいじめをするなと言いながら行動できない事に対しての言葉としては正しいが、

その言葉通りに行動する事が正しいか?と問われたら正しいとは言えない。

物事には何でも立ち向かえば良いとは限らないからだ。

仮にあのまま藤野涼子検事が助けに行ったとしても逆に彼女も被害を受けただろうし、

場合によっては彼女すら被害者になったかもしれない。

あの場面で立ち向かって良い場合は大出俊次被告より確実に強い場合だけだ。

勝てる確証もない中向かってもその言葉通りにならないという事だ。

それは神原和彦弁護人に向けた言葉でもそうだけれど、

神原和彦弁護人の場合確かに父親はそうだったかもしれないが、

同じ血が流れているからといって同じになるという根拠はない。

それは残念ながら柏木卓也がそういう事例を理解できなかったからでもあるだろうし、

何より人の人生はその人が変えられる事を理解できなかったからに他ならない。

全ての人生が辛い事だけだった訳じゃないというのは

神原和彦弁護人が感じた事通りであり、

この件に対して柏木卓也が間違いだと断言する答えはない。

この事件の全容としては柏木卓也が自らの人生の答えは

1つにしてしまったがために他の答えがあるにもかかわらず放棄した自殺であり、

それに端を発した大出俊次被告の告発文は間接的な発端によって

発生した事件だったという事だ。

もし柏木卓也が死ななかったらどうなっていたのか?

というのは仮説になってしまうので語れないが、

少なくても彼が投げかけた言葉が藤野涼子検事と

神原和彦弁護人を動かした事は紛れもない事実だ。

総評として事件の真相に辿り着いた時この事件において

1つの出来事に対して複数の要因が絡んでいるがために

真実が遠ざけられた事は綴られれいた。

もちろん神原和彦弁護人がこの事件を絡めて

柏木卓也に対して自らの罪だと述べた事については私自身は罪だとは思わない。

真実から感じる事としては柏木卓也は答えは1つしかないという部分で

自らを追い込んでしまったが故の自殺だったと結論付けられる。

大出俊次被告のこの件以外の裁判を仮に行った場合は

多数の有罪が確定するだろう。

それだけは成人が行った場合は犯行累積的に考えても

身勝手極まりなく情状酌量の余地はないという主文が言い渡される事だろう。

この裁判はこの中学校で起きた事件を学校全員が当事者として知る権利の元に

皆が真実を求めた裁判だった。

この裁判は劇中では伝説となっているが、

真実に辿り着くという事は色々な犠牲も払う事になる。

この真実から取り返しのつかない真実も明かされた訳であり、

その真実を向き合うという点では当事者には良かったのではないだろうか?と感じる。

全ては皆が真実を知ろうとしたが故の結果だ。

その結果を確り受け止める事ができれば

この裁判の意味を確り理解する事ができるだろう。

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ソロモンの偽証 第II部 決意
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ソロモンの偽証 第III部 法廷
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