10月27日公開の映画「終の信託」を鑑賞した。

この映画は周防正行監督最新作品でぜんそくで余命いくばくもない

患者を殺した罪に問われた女医がそこに至るところの過程を回想しながら

検事の事情聴取を受けてその真相と終末医療の是非を語っていくストーリーである。

終末医療の難しさを感じる作品であり、

検事側はとにかく起訴して有罪にする事に終始する姿勢に医療の在り方、

そして取調べ及び裁判、司法の在り方を問われる問題定義な作品となるだろう。
終末医療はおそらくこれから生きていく中で絶対に避けられない事であり、

多くの人が経験する事でもある。

私も昨年祖母が亡くなり、その祖母も延命治療を望まない意思を

生前告げていた事で延命治療を行わなかった経験をしているんだけれど、

今回のケースも延命治療の是非について改めて問題定義される作品となる。

日本の年間自殺者が3万人を超える中で余命数か月もない状況で

ほぼベットの上でしか生きられない場合それは例え数日命があったとしても

殺人に問えるものなのだろうか?

その問題点とさらに起訴する検事側も問題点にレビューしていきたい。

キャスト

折井綾乃演じる草刈民代

江木秦三演じる役所広司

高井則之演じる浅野忠信

塚原透演じる大沢たかお

杉田正一演じる細田よしひこ

江木陽子演じる中村久美

他多数のキャストでストーリーが進行する。

ストーリー

呼吸器内科医の折井綾乃は、同じ職場の医師・高井との不倫に傷つき、

沈んだ日々を送っていた。

そんな時、重度のぜんそくで入退院を繰り返す患者・江木秦三の優しさに触れて癒やされる。

やがて、お互いに思いを寄せるようになる二人だったが、江木の症状は悪化の一途を辿る。

死期を悟った彼は、もしもの時は延命治療をせずに楽に死なせてほしいと綾乃に強く訴える。

それから2ヵ月、心肺停止状態に陥った江木を前に綾乃は激しく葛藤する。

結末は劇場で観てほしいけれど、

今回のレビューとしてまずこのストーリーに登場する

折井綾乃と江木秦三は15年主治医の綾乃の元で泰三が

ぜんそくの治療を受け続けている。

まずぜんそくという病気だけれど、

この病気は非常に厄介な病気で小さい時に発症しても克服できる人もいれば、

大人になっても克服できない人もいる。

私も小さい頃はぜんそくだったので、その辛さは嫌という事知っている。

再発した高校生の時には数日間苦しい日々を送ったりもした。

ゆえにこれが大人になれば命に係わる病気となり泰三のように

入退院を繰り返し仕事もできない状況になるケースもある。

この劇中でも出てくるんだけれど、

とにかくぜんそくはその日の気候によって体調の良い日と体調の悪い日があり、

病状が重症になっても必ずしも毎日体調が悪いとは限らない。

これは綾乃が事情聴取で語っているんだけれど、

こういう専門的な見解と事例を踏まえて聴取しなければ

このぜんそくという病気がどれだけ難しい病気なのかを理解する事はまず難しい。

いくら検事でも自らぜんそくでない限りその苦しみは理解し難いものである。

そんな綾乃は同僚だった高井則之と不倫関係に陥り一度自殺未遂を起こしている。

女性って時々解っていてもそういう恋に陥る事があるが、結果裏切られてしまうのだった。

その後泰三から勧められたクラシック曲が綾乃の心を救うのだった。

正直この時点で綾乃と泰三には恋愛関係というより心のよりどころを

綾乃が感じていたというのがこの関係の正確な流れだ。

そんな中で綾乃は泰三からこれ以上妻を苦しめたくない、

何かがあれば延命治療せずに楽にしてくれと告げるのだった。

現在の医療行為については患者が延命治療を求めない場合

書面で患者自ら同意書にサインする必要がある。

その場合は延命が見込めない場合に限り延命治療をせずに

殺人とは認められず尊厳死として扱える。

ただここでもし最大のミスがあったとすれば綾乃は泰三に延命治療をしない

同意書にサインを求めなかった事が最大の起訴要因と言える。

この時綾乃がこれだけ早く泰三が意識のないこん睡状況になり

自らの意思を確認できない状況になるとは思わなかったと思うし、

仮に同意書にサインするにも家族の同意も必要なので家族がいない場合以外では

本人の意思だけで同意できるものではない。

ここで考えなければならないのはこの状況になった場合

家族が確り現実を受け入れる事ができるのか?という事だ。

私の場合は元々亡くなった祖母は高齢であり、

これ以上の延命治療をしたとしても余命何年もない事、

そして既に長年の国が認める重度の重い病気だった事で

回復の見込みはないと既に医師から告げられていたので、

それは本人もわかっており、延命治療は望まないと家族には告げられていた。

ただそれを告げられてから5年生きただけに

その間だけでなくそれ以前の家族の負担は10年近くに及ぶし、

それだけの期間になると家族そのものの負担は非常に大きなものになる。

子供が近くに住んでいるとどうしてもそういう問題は付きまとうし、

遠くにいれば尚更難しい問題となる。

終末治療はそういう総合的な家族負担の面を考慮しなければならず、

延命治療を望まないという中で綾乃は泰三の意思を尊重した結果

延命治療を中断して泰三の命は薬により楽になって亡くなられた。

うちの場合もこのストーリーのように祖母は心臓発作で心停止し、

一度は心肺は戻ったものの、自発呼吸ができず1か月間大学病院で人工呼吸をうけていたが、

今の大学病院は治る見込みのない患者については

長く入院させない方針なので別の病院に移った。

そしてそこでは設備も大学病院より落ちて自発呼吸のみで1か月ほど生き続けて亡くなった。

ゆえにここで出てくる泰三と似た状況であり、

例え綾乃が延命治療をし続けたとしても病院の設備と家族の負担を考慮すれば

もってあと1か月だったと考えられる。

そういう事情を考慮してもこれで起訴されたという事は誰かが綾乃に対して悪意があり、

遺族にそういう吹き込みをしたと考えるのが相当だが、

告発したのが誰なのかはここでは語られない。

そして塚原透検事との取調べになるが、

正直のところ多くの検事は警察が起訴した時点で検事はいかに

有罪にする事しか考えていないかという描かれ方をしているが、

これはこの間起きたウイルス遠隔操作誤認逮捕事件で

異例のアニメ演出家北村さんの起訴取り消しという大失態を起こしているように

既に検事は逮捕状を出すタイミングを伺い、いかに有罪にしようか自白させようとしている。

聴取の中であれほど検事が勝手に供述調書に検事の描いた筋書きが

書かれる事そのものが既に有罪ありきで掛かっている。

全ての検事がそういう聴取をしているとは言わないが、

多くはウイルス遠隔操作誤認逮捕事件で露呈しており、

検事は有罪にして手柄を立てようとしか考えていない。

アメリカではそういう自白を防ぐために公開聴取を行っており、

日本もこの点では客観的に観る事ができる第3者が

この聴取と被疑者の言い分を汲むべきである。

医学上の問題、司法上の問題の両方を上手く突いた作品だった。

総評として結局綾乃はその後逮捕され有罪判決を受ける。

しかし本当にその判決が正しかったのか?

と問われた時自らの身にこのケースが起きたらそう自信を持って言えるだろうか?

そして自らの最期の時にはたして意識のない植物状態に

近い状況だったとしても延命を望むか?

もし医学上完全な意識がない植物状態でない場合に

延命治療を中断したらそれが殺人となるなら

患者本人は自殺するしか選択肢が無くなるという事になる。

それが本当の医療の辿り着く結論なのだろうか?

医療がいくら進歩しても人間は必ず亡くなる。

その中でどういう亡くなり方をさせてあげるのか考える時に今来ているし、

司法も延命治療を中断したら本人の意思がなかった場合

殺人と断定し1人の医師を有罪にする事が本当に正しい判断なのか?

もしその結論が正しいなら治療する意味は失い、

医者に頼らずに亡くなるしかないだろう。

この映画で描かれているように綾乃のような医師が検事の手柄の為に

有罪を受けて失うような事が無くなってほしいし、

検事もまたウイルス遠隔操作誤認逮捕事件で誤認起訴した場合は

起訴相当の有罪判決を受けるほどの制度にしなければ

検事も真剣に真実と向き合わないのではないだろうかと考えさせられた。

何が正しい?

何が間違い?

ではなくどうするべきだったのか?

という答えに患者の家族も辿り着けるような道筋を

考えなければならないのではないだろうか?

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