4月29日公開の映画「八日目の蝉」を鑑賞した。

この映画は角田光代原作の「八日目の蝉」を映画化した作品で、

生まれたばかりの頃から4歳まで誘拐犯に育てられた娘が大学生となり、

その事件と向き合いながら自身も誘拐犯と同じ境遇に直面する事で

誘拐犯の真実を知ろうとするストーリーである。

誘拐犯の誘拐はもちろん許される事ではないが、

そこに至るまでの経緯、並びに誘拐後に子供を育てる姿には

本当に誘拐犯が望んでいた事、

そしてその子供はその愛を確り受け止める事を知るにつれ

本当の母親以上の愛情と本当に愛された真実を知る事になるだろう。
事件の経緯を知れば知るほどこの事件が

どうして起きたのかを考えさせられるんだけれど、

誘拐そのものは許される事ではないのでその罪は罪としておくが、

物事はその事件に対して表面的な部分しか見ないと

その事件だけでただ悪いと判別する事がある。

多くの報道で伝えられる部分の多くはその一部始終であり、

その一部始終で私たちは判断しているのが現実だ。

ただ事件として全容を見ていくと必ずしも

それが全て悪いとは言いかねる部分もあるし、

無論全てを知ってもそれが全て悪いとなるケースもある。

この事件は誘拐された幼い女の子が誘拐犯に

4年育てられるという数奇な運命でもあり、

その4年間がその後の人生に色々な事をもたらしてく事になる。

誘拐するまでの経緯、そして誘拐した後の子育てがある訳だが、

その真実を知った時果たして誘拐犯を全て悪いと言い切れるだろうか?

そして誘拐された女の子は20歳を超えて知る事と

その境遇について果たしてどのような決断をする事になるのだろうか?

それをレビューしていきたい。

キャスト

秋山恵理菜演じる井上真央

野々宮希和子演じる永作博美

幼少時の秋山恵理菜(薫)演じる 渡邉このみ

千草演じる小池栄子

岸田演じる劇団ひとり

秋山丈博演じる田中哲司

秋山恵津子演じる森口瑤子

沢田久美演じる市川実和子

沢田昌江演じる風吹ジュン

沢田雄三演じる平田満

エンゼル演じる余貴美子

滝演じる田中泯

他多数のキャストでストーリーが進行する。

ストーリー

秋山恵理菜は生後6ヶ月の時に野々宮希和子という女に誘拐され、

4年間、薫という名前で彼女に育てられていた。

希和子は恵理菜の父親・丈博と不倫していたのだ。

保護された後、恵理菜は実の親のもとに戻っても、彼らを親と思えずにいた。

実の母親の恵津子は失った4年間に苛立ち、秋山家は壊れていった…。

19歳になった恵理菜は一人暮らしを始める。

そんな彼女のもとに、事件のことを調べているライターの安藤千草が訪ねて来た。

結末は劇場で観てほしいけれど、

今回のレビューとしてますこの事件がどうして起きたのか?

というところから始めなければならないだろう。

この事件の経緯は誘拐犯となる野々宮希和子は秋山丈博と不倫の恋に落ちていた。

丈博は希和子に妻と別れて後々一緒になると言うが、

そんなそぶりすら見せない。

そんな中希和子に丈博との子供ができた。

その事を話したら丈博は産んでもらったら困ると言われ、

希和子は中絶する事になるが、

希和子は子供が欲しかっただけに、この決断を重く苦しいものだった。

それが原因で希和子は子供を産めない体となってしまったのだった。

そんなある日希和子の元に丈博の妻秋山恵津子が

押しかけてきて産めない体になった

希和子を散々罵った挙句丈博と離婚するつもりはない事を突きつけたのだった。

そんなある日恵津子が丈博を駅まで送る事になり家を空けた

その間に希和子は丈博の家にカギがかかっていなかった

空いていた窓から入りそこで眠っていた

恵理菜を見た瞬間、希和子は恵理菜を誘拐したのだった。

これが事件の経緯だけれど、

この経緯から考えて誘拐に至る理由がある程度見えてくるんだけれど、

最終的な見解は最後にするが、希和子は愛した丈博の子供がほしかったし、

自身も子供がほしかった。

しかし丈博はそれを望まず、愛する人のために中絶する苦渋の決断をするのだった。

それに丈博の妻恵津子が押しかけてきて中絶した事を信じられないと言い放った。

第3者からみればそれは信じられない事なんでしょうけれど、

これを自ら妊娠しているところにあなたには産む資格は無かった

という事を見せつける事こそ希和子の気持ちを

踏みにじった行為だったと言わざる得ない。

子供が欲しかった→愛する人が欲しくなかった→愛する人の妻から産む資格がない!

という経緯からすれば希和子には耐え難い事だっただろう。

なら産む資格は無くなったとしても育てる資格があるのでないだろうか

という考えに希和子が至ったとしても不思議じゃないと考える。

元々一目丈博に会うために向かったのだろうが、

それが偶然恵理菜と出会う事になった。

そしてそこで産む事が出来なかった希和子は恵理菜を育てる

という決心を固めたと誘拐の経緯を考えるべきなのだろう。

裁判では4年間恵理菜を育てて頂けた事に感謝していますという言葉を述べているが、

愛する人の子を育てるという決意が希和子には最初からあったからこそ

4年間恵理菜を育てるに至ったのだと考えるべきだろう。

もし憎んでいたらそういう事はまずないだろうし、

逆に恵理菜を殺していても不思議じゃない。

それは誘拐しながら4年間恵理菜を育てて頂けた事に

感謝していますと言われた恵津子には信じ難く受けるだろうけれど、

そういう自分も希和子に残酷な言葉を投げかけたという事を後々明らかになって行く。

そんな境遇で育った恵理菜は産みの両親の元に戻ったものの、

産みの両親とは上手くいかない日々が続き、大学生となってから1人暮らしをしていた。

そんな中20年前の誘拐事件について調べている

ライターの安藤千草が訪れてきて当時の事を取材したいと話し

当時の記事などについて資料を渡されたのだった。

しかし恵理菜はその事は昔から知っており、改めて見る事はなかなかしなかった。

そんな中恵理菜にも新しい恋があった。

それは塾の講師をしている岸田という男だった。

岸田もまた希和子と同様に妻子を持っており、

恵理菜にとって希和子と同じ不倫の恋だった。

そんな中2人は結ばれたが、それは結ばれない愛だった。

恵理菜はライターの千草と次第に打ち解けるようになったある日、

千草に妊娠していると告げ、妊娠検査薬で確かめたら妊娠している事がわかった。

最初を中絶しようとしたが、

できず千草にその子を一緒に育てようという思いもしない言葉を

恵理菜は受けるのだった。

そこで恵理菜は千草がかつて薫として希和子といたある施設で

一緒に遊んだ子供だった事を告げたのだった。

恵理菜を誘拐した希和子は恵理菜を丈博との子につけるつもりだった

薫という名前で呼んでいた。

身寄りのない希和子は事件現場から遠くへ逃げるように大阪へ逃げた。

そこで駆け込んだのがエンジェルホームという駆け込み寺のような

様々な事情で暮らしている女性たちの施設だった。

ここはある意味宗教的な場所だけれど、

当時はオウム真理教のようなオカルト宗教が問題視されてきた時代であり、

この施設での事は次第に問題視される事になる。

そこで恵理菜は3年間暮らす事になるのだが・・・

その前に恵理菜はこれまでの誘拐された経緯などを

千草の取材を通して知っていた事もあり、ある決意を固める。

その為に恵理菜は久しぶりに実家に戻り

そして産みの母恵津子にお金を貸してほしいと告げ、

妊娠している事を告げ産む事を告げるのだった。

それを聞いた恵津子はそんな子降ろしなさいと告げるが、

恵理菜はかつて恵津子が希和子に言った言葉を恵津子に言い放ち、

希和子のような選択はしないと告げたのだった。

降ろした事を信じられないと罵り、自分の娘には降ろせと言う。

これは完全に矛盾している考えだけれど、

かつて希和子に降ろした事に対して理解した人が

恵理菜にそのような事を言うなら子供の幸せにならない

という道理と理解と説得力があるだろうけれど、

不倫した相手に降ろした事を信じられない。

ただ自分の子には降ろせという事は自らのエゴで

物事を判断しているとしか言いようがない事であり、

恵理菜が納得する訳がない。

これも希和子が4年間愛情を持って育てた事と

育ての母のようになってはならないという

恵理菜の想いが例え不倫の子でも

自らは不倫相手の人に愛情を持って育てられた

という想いが気づかないうちに恵理菜にあったのだと感じる。

ただ恵津子も愛する丈博と別れたくないという想いが

正常な判断を逸した言葉となり、

希和子の立場じゃないと理解できない事は

恵津子の立場では理解できない事に繋がり、

それが矛盾する発言と理解できない事に

繋がっていく事になったと考えると恵津子の発言も全く理解できない事ではない。

これにはやはりそうさせた原因がある訳だからね。

それが恵津子の普通の幸せの家族で有りたかったという言葉に集約される。

そして恵理菜はエンジェルホームでの暮らしの足跡、

そしてその後暮らした島での足跡を千草と辿ってくことになる。

果たしてその足跡を辿る事で恵理菜は何を知り、

希和子に何の愛情を感じる事になるのだろうか?

結末は劇場で観てほしいけれど、実に考えさせられるストーリーだったし事件だった。

まず事件の根本的な原因は言うまでもなく丈博の不倫に他ならない。

希和子は誘拐の罪で懲役6年の実刑を受けたが、

個人的な見解から述べるとこうなってしまったのは丈博が希和子と不倫したからであり、

その後恵津子が希和子に残酷な言葉を突きつける原因となっていった。

それが原因で希和子は愛する丈博の子を育てようと決心した訳だから、

本来は原因を作った人も罪に問われなければならないのではないだろうか?と感じる。

結果的にはその後の誘拐事件で社会的制裁を受ける事になるのだが、

3人の人生だけでなく、その後の希和子が関わった人たちの人生を狂わせた

罪は丈博が生涯背負わなければならないだろう。

そして希和子と恵理菜の間には4年間の絆が確り刻まれていた。

それを知った時恵理菜は4年間の真実を知るのだった。

総評として誘拐犯の希和子に育てられた恵理菜は

20歳を過ぎるまでその真実を知ろうとしなかったが、

知ったからこそ解る事もあり、

その4年間の間には希和子から多くの愛情が注ぎ込まれていた。

数奇な運命を辿ったけれど、同じ過ちを繰り返さない事に繋がった

という点では恵理菜の4年間との生活はある意味無駄じゃないだろうし、

愛すれば誰の子だったとしても自分の子のように育てられるという事でもある。

世の中には養子として育つ子もいるし、

そういう育ち方をしても確り愛情を感じて育っている人は多い。

今回の希和子のケースでは愛する人の子供という事もあったが、

愛する人の子でも愛情を持って育てる事は難しい。

そういう観点から考えれば恵理菜は育ての親といえる

希和子との生活には愛情に満ちていたし、

それが希和子が恵理菜に伝えたかった

同じ過ちをしないでほしいという想いが詰まっていたと感じたい。

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